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東京台東区は谷中から石垣島へ。


by fuutaro58
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2014年最後の夏?

 人間は失敗する生き物である。*1 失敗を経験値として昇華し、その後の人生に生かすことが大切だ。*2 それを生かすことができないことを、愚かと呼ぶ。*3 しかしその愚かさこそが人間であるとも言える。

 11月28日東京から友人のGが来島。前日の大雨のお陰で、しばらく続いていた夜間断水も解除され、一息ついたところで8番街の居喰屋(居酒屋)『迷亭』で痛飲する。翌29日気温29度、快晴。Gがバスで拙宅までやってきて、3人で初ドライブに出発。最初の目的地は川平。このコースは以前自転車で途中までツーリングしたことがあるので、道に迷うことはない。ユイロード(県道39号)に入ってひたすらまっすぐ直進すれば良いのだ。予定どうりその?道を右折、『ホテルアビアンバナ』の前を通って直進する。
 車は市街地を抜け、畑が広がる田舎道を進んでいく。やがて牧草地に出て……。
 何か変だ。どんどん山の中に入っていく。ユイロードは途中海岸線に出て、海ノ中道を通り、川平に向かうはず。それが草ぼうぼうの舗装されていない道を突き進み、やがて、前に進む道が消えてしまったのだ。*1 
 不安というぞうり虫がいや増しに増殖していく、《航海、後悔、更改》。 何しろ運転手は少し紅葉の入った若葉マークのわが連れ合い。車はなるべく舗装されて広そうな道を探しながら右往左往。小生は冷静さを装いつつ「うんそのまままっすぐ進めば良いんじゃないかな」「そこはだめだ」「誰か人がいないかなあ~~」……。助手席のGは笑いをかみ殺していたらしいが、やがて大爆笑。
 そうこうするうち、【←バンナ公園】の標識を見つけた。「あっバンナだ。て、いうことはこのまままっすぐに行けば聖紫花橋に出るよ」。石垣ダムにかかるその橋を左に見つつバンナ公園北口を通り抜ける。《ということはこのまま道なりに行けば『やいまー村』に通じる名蔵に出るはず》*2 そうこうするうちに、やっとというか、何とかというのか、車はそれぞれの思いを乗せて川平に。《ハラホレヒレハレェ~》。

 車を『石垣シーサイドホテル』の駐車場に入れ、底地(すくち)ビーチに向かう。見渡せば広いビーチにホテルの客と思われる水着姿の若い男女が数名と監視員、それにわれわれを加えても10人ほどしか見当たらない。「先に海に入っているよ」というGを残してわれわれは水分補給にホテルに向かう。僕はオヤジらしく缶ビールを片手に海岸沿いに建てられた茅屋(→休憩所のような所で円形のカウンターがあり、オンシーズンには飲み物も出せるようになっている。)で一休み。
 しかしそれにしても泳いでいるはずのGの姿が見えない。水着姿の女性が連れ合いに、Gが海岸の右手にいたと話している。やがて監視員が心配してやってきて双眼鏡を覗いている。私はといえば、《もし何かあったら彼女の夫君になんと謝れば良いのか》などと益体もない妄想に駆られ、体を伸ばして水際から沖まで目を凝らしていた。
 「あっ!見えた」。監視員の声。案ずるより生むが安し、ではあるけれど、事前にもっと打ち合わせをしておくべきだったと反省。*1 そろそろ場所を変えようということで次の目的地米原キャンプ場に向かった。

2014年最後の夏?_e0167681_16455629.jpg 米原。キャンプ場と名がつくだけあってこの季節にも大きなテントが数張り。長期滞在らしく、簡易のテーブルなど、それなりの設備がしっかり設えられている。海岸に向かうと沖合いに白く大きな船が投錨中。どうやら海上保安庁の巡視船らしく、この海の先に尖閣列島があることをいやおうなく思い出させられる。西表の海岸沿いほどではないが、簡体字で書かれた空のペットボトルが数点。その中に『上海』の文字が。好戦派慎ちゃんの残滓がこんなところにも。
 僕は砂浜にブルーシートを敷いて、お留守番。女たち二人は嬉々として海へ。米原は底地以上に閑散としていて、母娘連れが一組とキャンパーらしい青年がひとり、水着姿の白人カップルが一組通りすがっただけだ。 「Hey!」彼らになんとなく声をかけ、聞くともなく聞くと、フランスからのツーリストらしい。かの国の第2(第3?)次ジャポニズムは本物のようだ。そんなこんなしながら、潮に流されて船体を左右に振る巡視船を眺め、潮騒を聞いているうちに二人が海から上がってきた。
 「うつぼに牙をむかれたよ」「ダツ(鬼カマス)が向かってきて怖くなって逃げた~」「こんな(手を広げて)ブダイがうろうろしていたよ」などキャッキャ言いながら喋り捲っている。僕はそろそろ行かなくちゃ、と二人を促し、最後の目的地『フォルスターレ・ウーノ』に向かった。

 語感からわかるようにそこはイタリアン・レストラン。森の隠れ家的なレストランらしく、実際、地図を見てもさっぱりわからない。目印らしいものは県道沿いにあるようなのだが、その先途中から道がなくなっているのだ。ともあれ出発。おしゃべりに夢中な女子二人の声を子守唄に転寝。気がつくと左手に平久保岬が見える。もう伊原間(いばるま)が目と鼻の先、慌てて取って返したのだが、今度は行き過ぎ、目印のひとつ公民館前で、じっくり検討、のろのろ車を走らせると、左手に小さなブルーの看板。一同歓声を上げて左折した。
 ところがやはり途中から未舗装の道に入ったり、舗装道に出たり悪路の連続。Gはわけのわからない地図に首っきりで、車が右折したところで、「ちょっと待って」。「今のところまっすぐだと思う」。
 彼女が言うところは一応轍があるが、土くれのてっぺんに親父の禿頭みたいに草がちょろっと生えているようなところ。「違うんじゃない?」と言ってみたものの、「いやここだと思う」というGの言葉に促されて、ハンドルを切ると、おおそこはサンクチュアリ。『フォレスターレ・ウーノ』の言葉に偽りのない、聖域がすくっと立っていた。「やったー」の歓声に応えるように「すみませ~ん」という奥さんらしき人の声。
 奥さん手作りの漆器の皿、グラスに盛られた料理や飲み物は文句なしの逸品だった。
 ギャラリーになっている2階の作品を見せてもらい、だんなさんにお話をお聞きしているうち、ふと気がつくと外は薄闇が忍び寄ってきていた。慌てて彼女たちを促し、勘定を済ませ、宵闇迫るラビリンスに飛び出した。禿頭を越えて車は右にハンドルを切る。「あれ、真っ直ぐじゃなかった?」。このとき、《一度店に戻って、ご主人に道を確かめたほうが良いんじゃないか?》、天の声が囁きかけたが、結局口には出さず、車は冥界に泳ぎ出してしまった*3。それから十数分、車は人ン家に嵌り込んだり、道といえないような場所に踏み込んだりと悪戦苦闘の連続。人家はあるのだけれど、灯りがついていず、道を尋ねようにも尋ねられない。《本物の負暗、婦庵、不安》に駆られ始めたとき、前方に人の影。慌てて近づいて「すいませ~ん。道に迷っちゃって」と、声をかけた。おじい「どこにいくんさー」、「県道に出たいのですぅ~」、「すぐそこさ~」。
 わずか数秒で県道へ。《しっかしあのおじい、年喰ったキジムナーかなぁ~》なんて思いつつ伊原間から我が家へと漆黒の闇の中、車を走らせたのだ。
 「しっかし、面白かったねぇ」とはGの声。「もう大丈夫だからねぇ~」とは連れ合い。おいらは《何言ってやんでぇ》と心で嘯きつつ、思うのは今日来るはずの荷、『山崎シングルモルト リミテッド エディション』と『バランタイン17年グレントファーズエディション』のことばかり。

 実はこの原稿を書いている今は12月2日。でも、初校? を書いたのは昨日。なんとこの量ばっさり消してしまったのです。*1*2*3
by fuutaro58 | 2014-12-03 21:38