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by fuutaro58
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妄想の連鎖

ここのところ読み進めているのがサラ・パレッキーの「V ・Iウォーショウスキー」シリーズ。このシリーズ、実は20年ほど前に何冊か読んでいたのを復活させた、という感じ。
主人公のヴィクトリアはポーランド系の移民の子。父親は元シカゴ警察の警官で(故人)母親(故人)はイタリア系。シカゴの貧しい地域に生まれ、苦学してロースクールを卒業。国選弁護人の仕事をしていたが、今はディテクティブ(私立探偵)を開業している。年齢はたぶん現在は60歳過ぎ(昨年出た最新作-シリーズ15作目--を読んでいないので推定だが)。
このシリーズの面白さはなんといっても主人公ヴィクのキャラクターに起因する。その身は決して真っ白ではないのだが(時に家宅侵入など非合法なことも平気でする)、巨悪に対して決してひるまない。そのお陰で毎回毎回、瀕死の重傷を負って奇跡的に生還するというパターンを繰り返すわけだが、その分彼女の私生活を含め、きわめてその生活のありようが精緻に活写されている。貧しく、汚く、無学で、危険な彼女の生まれた界隈にうんざりし、逃げ出しながらも、こと何かあるたびに自己嫌悪に陥りながらも戻ってきて、彼らを踏みにじる巨大な欲望(利権を貪る巨大資本や、権力)と渡り合う。時に歴史を絡めたり(赤狩りで有名なマッカーシー旋風など)民族・宗教関連の問題を追求したり(9・11以降のイスラム教徒に対する故なき迫害など)きわめて現代的な要素を取り上げてそこに内包される現代アメリカの現状を生き生きと描き出す。
本物のリベラル。しかしそれにつき物のひ弱さや、頭でっかちなところはなく(ブルーカラー出身、ということもあって?)、しかも地に足を付けて生きている姿にはらはらどきどきしながらも、どうしようもなく共感してしまうのだ。
決してさらさらと読み進めることができる様な軽い読み物ではないけれど(しかも一作一作が大長編)読み応え十分、ぜひ手に取っていただきたいシリーズだ。

そのヴィクの恋人モレルは戦場ライター。「ハード・タイム」で知り合い、「ビター・メモリー」でアフガン取材に出かけ、「ウィンディ・ストリート」で負傷して帰ってくるのだが、彼のことが頭に浮かんだ瞬間、最近見た「NHKスペシャル 沢木耕太郎推理ドキュメント 運命の一枚 ~”戦場”写真 最大のなぞに挑む」に思いが馳せた。
戦場カメラマンロバート・キャパのスペイン戦争におけるピューリッツァ賞受賞作品「崩れ落ちる兵士」について、ノンフィクション作家沢木耕太郎氏の20年にわたる取材とNHKのCGなど最新技術を駆使した推理で、実はこの写真、彼の近くにいた恋人であり戦場カメラマンのゲルタ・タローが撮影したものではないかという話だ。
そしてまた、アメリカ人写真家ロバート・キャパという存在そのものが実は、ハンガリー人の「アンドレ・フリードマン」とドイツ人女性「ゲルダ・タロー(本名ポホリレ)」が創造した架空の人物ではないかという推理にたどり着く。
そしてまた最近NHKアーカイブスで再放送された「NHK特集 カメラマン サワダの戦争」で取り上げられたベトナム戦争とカメラマン沢田教一の映像へと思いは飛翔する。

「とりとめもない妄想の連鎖を取り上げてどうするのか」と人に問われれば、「埒もないことです」、と言う他ないが、人が生きる時間と空間とはなんだろう、というとりとめもなく、あてどもない自問が胸のうちに去来する。

生と死が背中合わせな時空を自ら選択して日常化された非日常を生きる彼らと私たちの違いといえば、実は「死」に対する、あるいは生に対する思いにいささかの違いがあるに過ぎない。にもかかわらず何がしかの憧憬?を彼ら(ヴィクを含め)に向けてしまうわが心のありようを訝しむ。
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by fuutaro58 | 2013-04-03 16:20