東京台東区は谷中から石垣島へ。


by fuutaro58
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嗜好というもの

最近、とても感じのいいカップルが店に来てくれている。
二組の出身地は大阪と札幌。前者が東京に移り住んで数ヶ月、後者が3年ほど。二組とも駒込周辺に居を構えられているとのこと。その札幌組みの女性がある日、「マスターこれかけていい?」と、手に取ったのがアルバート・アイラーの「ラスト・アルバム」。
「えっ、それ知ってるの?」
「大好き」
「うそっ~」「どうして?」「どこで知ったの?」
かなり興奮していたのだと思う。とにかく矢継ぎ早に質問の嵐を浴びせてしまった。

アルバート・アイラーは1974年に亡くなったジャズのアルトサックスプレイヤー。前に庄田次郎のライブにやってきた千葉の青年が、携帯の待ち受けにアイラーを設定していると聞いてびっくりしたが、まだ30をいくつか越えたばかりの、それも札幌あたりの地方都市に住んでいる女性が、まさか、というのが正直な思いだった。確かに今やインターネットがあたりまえになって、地方と東京の情報格差はほとんどない。
しかし、ジャズそれもフリーで、35年も前に亡くなった人、ちなみにMIXIのコミュもあるにはあるけれど、やっと二桁に乗るか乗らないかという参加人数。いかに忘れられたジャズメンであるか知れようというものだ。その彼を知っているというだけでも驚くのに、あまつさえ大好きだという。彼の大ファンである僕がいささか興奮しすぎたのもやむをえまい?。

と、ここまで書いてきて、改めて思うのが人の趣味嗜好の不思議さ。
人は時代性、育った生活環境など、さまざまな要素で、その趣味嗜好というやつが決定されるのだろうが、それだけでは片付けられないものがあることもまた事実だ。それをして、DNAなどと簡単に片付けられればいいのだろうが、そうともいえない節もある。

僕には3つ年下の弟がいる。彼とはその容貌、性格ともに似ているとはいい難い。しかし価値観、趣味嗜好についてはかなり似ている。ジャズ好きというのも共通項だ。映画好きという面でも人後に落ちない。
しかし一点どうにも噛み合わせが良くない点がある。
「様式美」というやつである。
もちろん僕とて、文化に裏打ちされた「様式」、というものを否定するものではない。
ただともすれば「様式」が「形式」化され、それに堕してしまう。
映像でいえば、いわゆるプログラムピクチャーという類。その際たるものが、たとえば「水戸黄門」だったり、「寅次郎シリーズ」だったり東映やくざ映画シリーズ(「網走番外地」など)だったりする。いわゆるワンパターン、予定調和の世界。僕はこれには我慢ができない。いやできれば避けたい種類の作品だ。
弟はそれを「様式美だから」の一言で片付けてしまう。
僕も否定する気持ちはないから、結局そこで話しはストップしてしまうのだが、どうにも消化しきれずにくすぶってしまうものがある。

確かに「様式」の世界には、人を安心させるものがある。安心して、くつろいで、その範疇でその世界を楽しむのだ。だから見ていて、聞いていて、不快、という感情は起こらない。それなりに楽しむことはできる。しかし、そのうち飽きる、だれる、眠くなる、そしてどうでもよくなる。次は、一年後、十年後、いっそのことなくてもいい、というのが僕にとってそういう世界なのだ。

(つづく)
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by fuutaro58 | 2009-12-01 19:00